火織譚〔ほおりばなし〕3話――蒼丞
夢岸が商いの喧騒を響かせ、荒鏑が工場の熱気で賑わうとしたら、この国の都、邑咲は、絢爛に華やいでいるとしか言い表せない。 人々は思い思いの装いをして、揚げ菓子や団子を歩き食いし、この間出来たばかりの百貨店を冷やかす。 夜になれば、酒を飲みな…
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火織譚〔ほおりばなし〕2話――統君
あの時は軍省を味方につけるしかなかった。 かつて宗主国だった紳〔しん〕が西方諸帝国に蹂躙され、旧王府が混迷を極めるなか、父王が崩御した。 自分がお飾りの女王に担がれるのは明らかだった。 そんな茶番に付き合う気はなかった。 いまでもあの軍人…
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火織譚〔ほおりばなし〕1話――蒼丞
近年、ずいぶん蒸気船が増えた。 生きて国に帰れる船員も多くなった。 商船の中継ぎの国、火織国の夢岸港はいままでにないほどの活気を呈している。 そこらを見渡しても、誰が火織人の人夫で誰が異国の船乗りなのか、一目では見分けがつかない。 火織王…
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